「そうしてると犬が犬を撫でてるようにしか見えないわね」


制服の赤いリボンを丁寧に結びながら、栖栗はそう言って無邪気に笑う。

しかし、そんな台詞は英にとってはただの嫌味にしかならなかったりする。


「‥‥ああそう」

「でも、ちゃんとお迎えに来れたのは偉いことだと思うわ」


偉い偉いと呟きながら、栖栗は英の頭を撫でる。

女子にこんなふうに頭を撫でられることは、一般男子からすれば、とても喜ばしいことなのかもしれない。

だが、栖栗にとってのこの行動は、主人公がペットを撫でているに過ぎないのだ。


「‥早くしないと、遅れるぞ」

「分かってるわよ。でも、そのときはペットが私をおぶって走るから大丈夫!」


ね、とゴールデンレトリバーの頭を撫でると「ワン」と元気よく吠え、尻尾を振る。

同じペットでもこうも違う。

愛犬がこんなふうに尻尾を振るのも、もしかしたら、彼女の調教の賜物かもしれない。