彼と初めて会話したときのことは克明に覚えている。
隣のクラスだったから、あんまり関わることがなく、ただ一方的にボクのほうが彼を知っている状態だった。
話したいとは思っていた。
でも、あのとき、あの一瞬だけ、彼と言葉を交わした時……
あぁ、彼は普通の子じゃないな、って思った。
その一瞬っていうのは、運動会のときだった。
100m走を、各クラス2人ずつで6人で並んで走ることになっていた。
その時、隣にいたのが彼だった。
「あ……」
隣に彼が来たとき、思わず声を漏らしてしまった。
それに反応した彼は、少し笑って見せた。
目が合ったのも、そのときが初めてだった。
そして、先生がスタートの合図をする直前、彼はボクのほうを向いてこう言った。
「風が味方してくれるって、だから俺が勝つよ」
その直後にスタートしたんだけど、ボクは一瞬だけ遅れてしまった。
彼は風のようにどんどん前へと走っていく。
遠くなる彼を追いかけながら、ボクは背中に違和感を感じていた。
不思議な感覚だった。
不思議な言葉を、その時ボクは聴いたから。
”早くなれ”
それが彼の言っていた《風》だったのかもしれない。
そのことは今でも、彼は教えてくれないんだ。
隣のクラスだったから、あんまり関わることがなく、ただ一方的にボクのほうが彼を知っている状態だった。
話したいとは思っていた。
でも、あのとき、あの一瞬だけ、彼と言葉を交わした時……
あぁ、彼は普通の子じゃないな、って思った。
その一瞬っていうのは、運動会のときだった。
100m走を、各クラス2人ずつで6人で並んで走ることになっていた。
その時、隣にいたのが彼だった。
「あ……」
隣に彼が来たとき、思わず声を漏らしてしまった。
それに反応した彼は、少し笑って見せた。
目が合ったのも、そのときが初めてだった。
そして、先生がスタートの合図をする直前、彼はボクのほうを向いてこう言った。
「風が味方してくれるって、だから俺が勝つよ」
その直後にスタートしたんだけど、ボクは一瞬だけ遅れてしまった。
彼は風のようにどんどん前へと走っていく。
遠くなる彼を追いかけながら、ボクは背中に違和感を感じていた。
不思議な感覚だった。
不思議な言葉を、その時ボクは聴いたから。
”早くなれ”
それが彼の言っていた《風》だったのかもしれない。
そのことは今でも、彼は教えてくれないんだ。

