楓はそう確信した。
かなたが話し始めた。
「祖父が若かった頃のことです。祖父は、この木の下で女の子の声を聞いたそうです。
でも、あたりを見渡しても、誰もいなかった」
かなたは、ゆっくりと言葉を続けた。
「最初は幽霊か何かと思ったみたいです。
僕の祖父は霊感のある人だった」
「……」
「でも、その女の子と話してみると、どうやら幽霊ではなさそうだった。
女の子が話すのは、祖父の知らないことばかりだったんです。祖父の生きる時代には、まだ存在しないものの話もしていたそうです。
それで気づいたそうです。女の子は幽霊ではなく、未来の時代を生きている人間だと」
そこでかなたは言葉を切って、楓に問いかけた。
「楓さん。楓さんが今いるのは、何という時代ですか」
「私がいるのは、二〇二一年の令和という時代です」
「ああ、やっぱりそうなんですね」
かなたは、嬉しそうに言った。
「僕のいる時代は、一九二一年、大正時代です」
「大正時代……」
楓は、息を呑んだ。
「知ってますか?」
「はい。歴史の教科書に載ってました」
「そうでしたか。僕は、令和という時代を知りません。今からちょうど百年後に、令和という時代が来るんですね」
かたなは感慨深そうに言った。
百年――。
この木の向こうには、百年前の世界が広がっている。

