楓は、不思議な気持ちでいっぱいだった。
それでも、やっぱり怖くはない。
たぶん、かなたと名乗った主が、とても穏やかで優しい声をしているからだと思った。
楓は思い切って尋ねた。
「かなたさんは、おばあちゃんが言っていた『妖精さん』なの?」
しばらく沈黙が降りた。やがて――
「おばあちゃん?妖精さん?ははっ」
笑い声がした。
耳元をくすぐられるような、不思議な心地よさがあった。
「違いますよ、僕は生きている人間です。残念ながら、妖精ではありません。」
人間?
でも、周りには誰もいない……。
楓はますます混乱した。
「楓さんは、人間?」
今度は、かなたが尋ねてきた。
「あ、多分、そうです」
「多分って」
かなたがおかしそうに笑った。
自分はこんなに混乱してるのに、なぜこの人(?)(本当は人ではないんじゃないかと疑っている)はこんなに落ち着いて笑っていられるのだろう。
楓はもう我慢できず、尋ねた。
「あの、どうして私はかなたさんの姿が見えないんですか?
かなたさんはどこから話しているんですか?」
「僕にも、楓さんの姿は見えませんよ。声が聞こえるだけです。
そうか。楓さんのおばあさんは、妖精がいると言ったんですね」
「はい」
「僕は、亡くなった祖父から違う話を聞かされました。『この木は未来とつながっている』と」
「未来と……?それって、どういうことですか?」
この人は、何かを知ってる。
だから、こんなに落ち着いているんだ。

