(もしかして……)
楓は、母が話してくれてことを思い出した。
胸がドクン、ドクンと高鳴る。
胸の前で、ぎゅっと拳を握りしめる。
「妖精さん……?」
姿の見えない何かに、問いかける。
すると、ぴたりと音が止んだ。
「誰?」
男性の、低い声が返ってきた。
楓は驚いて、再び辺りを見渡した。
もちろん、誰もいない。
(本当に、本当にいたんだ。
おばあちゃんが言っていた妖精さんは、本当にいたんだ)
胸の奥から、抑えきれない喜びが込み上げてくる。
不思議と、怖いとは思わなかった。
「誰かいますか?」
また同じ声がした。
慌てた楓は、
「私、楓……と言います」
思わず名乗ってしまった。
「楓……さん?」
少し間を置いて、声の主が言葉を繋げた。
「僕はかなたって言います」
「かなた、さん?」
「はい」
普通に会話してる……。
いったい、どこから話してるのだろう。

