木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―


ただ、つながっているのは声や音だけ。
楓には、かなたがどんな姿をしているのか分からない。
それは、かなたにとっても同じだった。
 

楓は、初めてかなたの声を聞いたときのことを思い返した。

あの日、楓は本当に「妖精さん」に出会ったと思ったのだった。




◇



楓が幼いころ。

祖母の家に遊びに行ったとき、一度だけ母と家の近くの林に入ったことがあった。

その林の中には、古びた一本の大きな木があった。その木は、枝いっぱいに緑の葉を茂らせていた。

母が木を見上げながら、楓に言った。

「楓のおばあちゃんはね、昔ここで不思議な声を聞いたんですって」

「え、不思議な声?」

「うん。まるで、この大きな木が自分に話しかけてくれたみたいだったんだって。
きっと、この木には妖精さんがいるのよって、おばあちゃんが言っていたわ」


「妖精さん?」

「そうよ。ママもそれを信じて、この木に何度か話しかけてみたんだけど、駄目だったわ。ママには聞こえないみたいね」

母は笑いながらも、心底残念そうに言った。
 

(木の妖精さんか――。

私も聞いてみたいな、妖精さんの声。

声だけじゃなくて、姿も見てみたい。

もし声が聞こえたら、出てきてもらえるようにお願いしよう。

そして会えたら――おばあちゃんが元気になるように、魔法をかけてもらおう)