義姉に全てを奪われ虐げられた令嬢は、青い小鳥の王子に溺愛される

「どうして……どうしていつも……」

 シーラが床に散らばった手紙の破片を見つめていると、パタパタと走って来る足音がする。

「シーラ様!大丈夫ですか!?」

 駆けつけて来たのはメイドのフルールだ。元々はシーラの母親のメイドをしていたが、シーラの母親が亡くなってからはシーラ専属のメイドとなった。この屋敷にいるのは、フルールの他に執事のハンドレーだけだが、ハンドレーはシーラの父親直属に雇われているため、シーラのいる屋敷にはたまにしかやってこない。

「すぐにお助けすることができなくて申し訳ありません。キリル様がいらっしゃる時は、シーラ様と二人きりにするようにとキリル様に言われておりますので……」

 申し訳なさそうに言うフルールに、シーラは首を振って悲し気に微笑む。

「いいのよ、お姉さまの言うことは絶対だし、言うことを聞かなければフルールだって危ないもの。こうして心配してくれるだけでも嬉しいわ、ありがとう」

 フルールに手を取られながら立ち上がると、シーラは小さくため息をつく。

(次はいつ来るつもりなのかしら……私のことが嫌いならわざわざ会いになんて来なければいいのに)

 散らばった手紙の破片を拾いながら、シーラはまたいつ来るかわからないキリルの脅威に怯えていた。

*

(いい天気。心地よい風が吹いていて散歩にはちょうどいいわ)

 キリルがやって来た数日後。シーラは森の中を散歩していた。シーラの屋敷はランドベル領の外れにある森の中にあり、天気のいい日にはよく散歩をしている。

 あちこちから小鳥のさえずりが聞こえ、木の上にはリスがいて可愛らしい顔でシーラをじっと見つめている。木漏れ日の光がシーラを照らし、あまりの心地よさにシーラは思わず目を瞑って深呼吸をした。

(本当に気持ちがいい。私が、唯一安心していられる場所)

 屋敷にいると、いつキリルが来るかわからない不安にさいなまれる。こうして森の中を散歩している時だけ、シーラが心から生きていると思えるのだ。

 ふと、遠くの方から人の声がする。

(この森に人が来るなんて珍しい。まさかお姉さま?でも、ついこの間来たばかりなのに……)