「あぁ……やっぱりこれは何度読んでも泣ける……」
何度も読み直して、話の内容も次のページでどうなるのかも知っている漫画。
だけど、読むとたまらない気持ちがこみ上げる。
そんな気持ちで胸いっぱいになる。
単行本を胸でぎゅっと抱きしめて、感傷に浸る。
「よし、次の……」
ベッドから立ち上がり、別の漫画を読もうとした瞬間。
カサカサ――。
不穏な気持ちを掻き立てる不気味な音が、静かな部屋に渡る。
その瞬間、俺の動きはピタリと止まる。
(お、落ち着け、俺……! 今の音は、絶対……!)
ゴから始まる四文字のアイツだ。
妙に気持ち悪いシルエットで、人の心を恐怖に陥れるアイツだ。
だがしかし、俺の部屋はアイツの侵入を許すような部屋ではない。
きちんと整理整頓をしているし、掃除機だってほぼ毎日かけている。
そして何より、去年の夏に仕留めるのを見逃してやった。
いわば、俺はアイツにとっての命の恩人。
それなのに、恩人の寿命を縮めるような音をさせるとはどういう了見だろうか。
そう思うと、バクバクしていた心臓から、次第にイライラし始めた。
近くにあった不要なフリーペーパーを手に取ると、くるくるっと巻いて片手で持つ。
そう――臨戦態勢である。


