それから、私と佐藤くんの間で言葉のない背中越しのやり取りが増えていった。 「佐藤くん、ありがとうっ」 そう声を掛けても、彼はやっぱり喋らない。 けれど、コクリ、と小さく頷いてくれるのを見ると。 差し出してくれている指先が寒さで赤くなっているのが視界に写ると。 私の心はストーブにあたっているみたいに、ポカポカと温かくなった。 彼の後ろ、私だけの特等席は、いつの間にか世界で一番大好きな場所へ変わっていた。