30センチ後ろの特等席









12月に入り、窓が白く結露している教室。









そんなある日、私は古典の授業中、大変なことに気がついた。





……消しゴム、忘れちゃった……!?





筆箱の底をいくら探しても、見つからない。


隣の子は熱心にノートを取っているから、声掛けづらいな……。






どうしよう……、と小さく息をついたその時。








「……ん」









前の席の佐藤くんが、振り返らずに右手を後ろへ伸ばした。


その大きな手には、使い込まれた黒い消しゴムが乗っている。










「あっ……、ありがとうっ」








小さく呟いてお礼を言うと、彼の背中が少し丸くなったように見えた。



よく見ると、耳の上の方が心なしか赤くなっているように感じる。







……気づいて、くれたんだなぁ……。