30センチ後ろの特等席




でも、彼の30センチ後ろの私──春野 小雪だけは知っている。






先生が派手に漢字を読み間違えた時。


彼の体が1センチだけ、ピクッと揺れる。


佐藤くんは今、ツッコミを入れているはず。





数学の授業中、彼がシャーペンをカチ、カチと等間隔で鳴らし始める。


あの規則正しいリズムは、彼が猛烈に退屈しているサインだ。






冬になって、制服のブレザーの下に大きめのセーターを着るようになった彼の背中。



誰も気づかない、佐藤くんの『小さな感情』を後ろから見つめること。









それが私の、冬の小さな楽しみだった。