30センチ後ろの特等席









「だから──」










佐藤くんは紺色のセーターで口元を隠しながら、春が来たようにふわっと、照れ臭そうに微笑んだ。














「これからは前じゃなくて──隣にいたい、です」















そう言って笑う彼を見て、私の胸の中にあたたかい風が吹き抜けた。








後ろから見つめていた大好きな背中は、明日から隣を歩くさらに特別な存在へ変わる。



30センチの距離は、きっと、もっと縮まっていく。
















そんな淡く愛おしい予感に、私の心は甘く、優しく満たされていった──。







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