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「リリ、どうした?」
一緒に祭りを見ていたランが、急に黙り込んでしまったリアラの顔を訝し気にのぞき込んだ。リリとは、記憶喪失だったリアラにつけられた名前だ。違和感がなかったのは、本名と少し響きが似ていたからだったのかもしれない。
ハザマと呼ばれるこの村は、この世でもあの世でもない世界だと言われている。
秋の実りの月が終わり、空の月が一度満ちて欠けると年が明ける。その時死者の国も生者の国も、それどころか過去も未来も、すべての世界の境界が曖昧になるといわれている。
そのため新年を祝う祭りでは、生きている人間が他の世界に連れ去られないよう守りの装束を着て篝火をたく。そうして一年の実りと無事を感謝すると同時に新年を祝うのだが、それでもまれに異界に迷い込むものがいる。
ハザマはそんな迷い人が集まった村だった。
どこにも所属しない、小さな小さな世界。
帰れないまま子孫を残していくものもいれば、いつの間にか消えるものがいたりと様々で、リアラのように記憶を失った少女が迷い込むことくらい珍しくもなかった。



