初恋メビウス~先に好きになったのは私です~

 漏れ聞こえた声から察するに、エヴェリーの想い人は生きていて、ようやく求婚する機会を得たのだろう。もしかしたら、想い人を忘れるくらい魅力的な女性に出会ったのか。

(どちらにせよ、綺麗な大人の女性よね)

 彼の隣に立つ美しい女性を思い浮かべるだけで、全身がばらばらに砕け散りそうな思いがした。きっと大勢の人から祝福されるだろう。

(でも今は、嘘でもおめでとうと言えそうにない)

 なんて情けない。
 己の心の醜さにショックを受け、鏡さえみたくなくなった。きっとひどい顔をしてるから。

 この国では、長女以外は婚姻可能な年齢が二十歳以上と決まっている。その昔、政略結婚に利用され、不幸になった少女たちがたくさんいたかららしい。
 でも今はその法律が恨めしかった。

(もし私が長女だったなら、十八歳になったその日にエヴェリー様に求婚したのに)

 冗談だと思われてもいい。はしたないと呆れられても、笑い飛ばされても構わない。
 それでも気持ちの区切りはつけられただろうから。
 でもリアラは三女で、年が明けなければ二十歳にならない。


 誰にもばれないようにこっそり泣いて泣いて泣き続け、リアラがやっと失恋を受け入れる決意をしたのは五日後のこと。
 エヴェリーの求婚は必ず成功するだろう。彼の愛を拒む女性なんているはずがない。
 だから自分は笑顔でそれを祝おうと決めた。
 愛しているからこそ、誰よりも彼の幸せを祝福するのだと。

(でも、どんな女性(ひと)なのかは、まだ見たくないな……)

 そんなことを考えていたからだろうか。祭りが始まるとほぼ同時に、リアラはハザマに引きずり込まれたのだった。