由耀は、キッチンに一時間ほど立っていた。
視線の先には一抱えもある深い鍋。
中には、3日間食べ続けたあの料理が半分以上残っている。
そういえば2日前に食材を買い揃えたばかりだった。
残念なことに冷凍庫のスペースは、野菜や肉などの食材で埋め尽くされている。
「こんなことなら少量で作ればよかった……」
そう後悔しても時すでに遅し。
「さくらぁ……」
飼い猫に縋るように呼び掛けるものの、当のさくらはぷいっと顔を背け、何も聞かなかったように通り過ぎる。
窓から外を見るとまた雪が積もっている。
今日も寒くなると思いながら、再び視線を鍋に戻す。
鍋の中から「私を食べていいのよ」と誘い込む4日目のミートソース。
――捨てるには勿体ない。どうにかして食べきってしまいたい。
それならいっそラザニアにでもするか?
しかしラザニアは先月食べたばかり。いい加減、違うものが食べたい……。
考えがまとまらなかった由耀は、鍋に蓋をしてダウンコートを着込み外へ出た。
これから除雪を始めるのだ。まずは玄関口から綺麗にしていく。
ザクッ、ザクッ。
鉄の重たいシャベルで水を含んで固まった雪の塊を、融雪溝にブンと投げ入れる。
そんな由耀の頭の中では、執筆している小説のプロット、登場人物たちのセリフが入り混じる。
その中に残ったミートソースの悲鳴さえも聞こえる。
「あの哀れなミートソースを、何とかしなければ!」
由耀はそんな決意を固めながら、次の雪山を崩し始めた。
プロットを作るように、創作料理を考える――。
ザクッ、ザクッ。
雪山をシャベルで削る音は、白菜を包丁で切るような音に似ていた。
軽やかに投げ入れた雪はまるで豆腐のように、融雪溝に溶けていく。
「鍋……?」
そんな様子を眺める由耀の中で、突如何かが煌めく。
そしてそれは、ビッグバンの如く激しく加速的に広がる。
――これしかない!
加えて最近某投稿サイトで閲覧したファンタジー小説が頭をよぎる。
決まった。
「そうよ、鍋にしましょう。異世界転生鍋よ!」
そう叫んだ由耀を、通りかかった近所の奥様が目を点にしながら見つめていた。
視線の先には一抱えもある深い鍋。
中には、3日間食べ続けたあの料理が半分以上残っている。
そういえば2日前に食材を買い揃えたばかりだった。
残念なことに冷凍庫のスペースは、野菜や肉などの食材で埋め尽くされている。
「こんなことなら少量で作ればよかった……」
そう後悔しても時すでに遅し。
「さくらぁ……」
飼い猫に縋るように呼び掛けるものの、当のさくらはぷいっと顔を背け、何も聞かなかったように通り過ぎる。
窓から外を見るとまた雪が積もっている。
今日も寒くなると思いながら、再び視線を鍋に戻す。
鍋の中から「私を食べていいのよ」と誘い込む4日目のミートソース。
――捨てるには勿体ない。どうにかして食べきってしまいたい。
それならいっそラザニアにでもするか?
しかしラザニアは先月食べたばかり。いい加減、違うものが食べたい……。
考えがまとまらなかった由耀は、鍋に蓋をしてダウンコートを着込み外へ出た。
これから除雪を始めるのだ。まずは玄関口から綺麗にしていく。
ザクッ、ザクッ。
鉄の重たいシャベルで水を含んで固まった雪の塊を、融雪溝にブンと投げ入れる。
そんな由耀の頭の中では、執筆している小説のプロット、登場人物たちのセリフが入り混じる。
その中に残ったミートソースの悲鳴さえも聞こえる。
「あの哀れなミートソースを、何とかしなければ!」
由耀はそんな決意を固めながら、次の雪山を崩し始めた。
プロットを作るように、創作料理を考える――。
ザクッ、ザクッ。
雪山をシャベルで削る音は、白菜を包丁で切るような音に似ていた。
軽やかに投げ入れた雪はまるで豆腐のように、融雪溝に溶けていく。
「鍋……?」
そんな様子を眺める由耀の中で、突如何かが煌めく。
そしてそれは、ビッグバンの如く激しく加速的に広がる。
――これしかない!
加えて最近某投稿サイトで閲覧したファンタジー小説が頭をよぎる。
決まった。
「そうよ、鍋にしましょう。異世界転生鍋よ!」
そう叫んだ由耀を、通りかかった近所の奥様が目を点にしながら見つめていた。



