「行ってきます!」
返事がないマンションの一室に言った。
私は里桜乃 朔。
わけあって一人暮らしの、ただの地味女。
――だけど。
私には、ひとつだけ秘密がある。
それは――
4階の窓から一歩足を踏み出す。
だん、と壁を蹴った。
冷たい風が全身を包む。
そして、近づく地面に足を向け、手すりをつかんで勢いを減らして着地する。
「ほっ…と!今日も大丈夫!調子いいっ…!」
――私が「トレーサー」と呼ばれる、いわゆるパルクールのプレイヤーであること。
ちらっとスマホの時計を確認する。
(ちょっと寝坊しちゃったけど…ここから走れば間に合う…!)
「っ…!大きいっ…!」
目の前にあるのは、綺麗な大きい学校だった。
(楽しみだなっ…!新しい学校生活…!)
期待で胸を膨らませていた、その時。
「おい。お前、見ない顔だな?」
「ひっ!?」
目の前に立ちふさがってきたのは、目つきの鋭い大柄な男の子。
「うちの制服?転校生か何か?」
「あ、えっと…そうです!」
ふーん、と言って頭の後ろに手を回した。
「何年?」
「3年、です。」
「は!?同い年!?1年かと思ったわ!」

