歳をとっただけの俺に愛が産まれた七日間

「それじゃ、横になって。 治療を再開するよ」

「うん」

エルザはゆっくり身体を横にした

俺は彼女に毛布を掛け、両手をかざす

青白い光が彼女を包んだ

昨日までと同じように、身体の中を探っていく

すぐに分かった

まだ悪い物が残っている

減ってはいるが、安心できるほどではない

「暖かい……」

エルザが小さく呟く

「この魔法……私は好き」

「そうなのかい?」

「なんだか……安心するの。 ハロルドが……ここにいてくれるって……分かるから」

俺は彼女の顔を見た

今までのように、もううとうとしている

目を閉じかけながら、まだこちらを向いている

「俺はエルザの傍にいるよ。 必ず、俺が治してみせる」

「うん……ありがとう……ハロルド……」

エルザの呼吸がゆっくりになっていく

「ハロルドは……やさしいね」

俺は胸が痛くなる……

「俺は優しくなんかないよ。 ただ、歳をとっただけさ」

エルザは目を細めた

「また……それ?」

少し笑っているように見えた

「でも……私は、嬉しいよ。 ハロルドが歳をとっていなければ……きっと……わたしなん……」

エルザが目を閉じると、小さな寝息が聞こえ始める

俺はその寝顔をしばらく見ていた

少し動いて話しただけで、こうして眠ってしまう

それほど弱っているのに、俺を気遣ってくれていた

胸の古傷に置かれた手の温かさを思い出す

一刻も早く、この子を元気にしてやりたい

俺は治療魔法へ意識を戻し、残っている細菌を探して殺す

それを何万回でも、何億回でもくりかえす

必ず最後までやりとげてみせる

それから昼になって、一度治療を止めた

水を飲み、簡単に食事を取る

エルザが目を覚ますと、彼女にも俺が作ったスープとパンを用意した

「ハロルドも食べたの?」

エルザが最初に口にしたのは、また、俺を心配する言葉だった

「食べたよ。 ちゃんと食べるって言っただろ」

「本当に?」

「本当だ、エルザが寝坊しただけだよ。 さぁ、ちゃんと食べてくれるよね」

「なら……いいけど」

エルザはそう言ってから、スプーンを持った

俺は椅子に座り、その食事を見守る

食事が終わると、俺は治療を再開した

エルザはまたすぐに眠った

眠ってしまうのは治療魔法による負担と関係があるのかもしれない

窓の外が少しずつ暗くなっていった

俺は一度手を下ろし、水を飲んでコップを置いた

もう少しだけ続けよう、再び手をかざすと、青白い光がエルザを包んだ

俺が意地でもエルザを助けてみせる

その為なら……俺がどうなってもいい

使う当てもないまま、ずっと続けてきた訓練が、今、この子の役に立っている

エルザを治して、自分で暮らしていけるようにしてやれたら

今まで俺が生きてきた時間も、無駄じゃなかったと思えるだろうか

俺は眠っているエルザを見つめた

この子には、これから先の人生がある

そこへ送り出すところまで、やりとげたい

そうすれば俺はもう十分なんじゃないか

彼女の所に……行ってもいいんじゃないか

俺はエルザを……助けなきゃ

青白い光が、静かな寝室を照らしていた