幸せの苦痛

中学校を卒業してから、僕は何度もあの三年間を思い返した。
楽しかったこと。
苦しかったこと。
嬉しかったこと。
悲しかったこと。
どれか一つだけを選んで、あの頃を説明することはできなかった。
ソフトテニス部で、仲間と練習した日々。
大会でベスト8に入れた喜び。
体育祭で走り、三位という結果を残したこと。
友達とくだらない話をして、何度も笑ったこと。
高橋先生が電話をかけてくれたこと。
美桜と手を繋いで歩いた帰り道。
頭を撫でてもらったときの温かさ。
抱きしめてもらったときの安心感。
どれも、僕にとって大切な思い出だった。
けれど、その思い出を振り返るとき、いつも少しだけ胸が痛んだ。
幸せだったことを思い出すほど、あの頃には戻れないのだと気づくから。
あんなに楽しかった日々も、今では過去になっている。
あんなに近くにいた人とも、少しずつ違う生活を送るようになっている。
それは、誰にでも訪れる当たり前の変化なのかもしれない。
それでも、当たり前だからといって、寂しくないわけではなかった。
僕は、人が好きだった。
誰かと一緒にいることが好きだった。
誰かの笑顔を見ることが好きだった。
そして、誰かに自分のことを大切に思ってもらえることが、何より嬉しかった。
だからこそ、人との関係が変わるたびに、僕は何度も立ち止まった。
自分の言葉で誰かを傷つけたこともあった。
自分の知らないところで言葉が広がり、苦しくなったこともあった。
大切な人との関係が終わったこともあった。
人を好きになることも、人と繋がることも、いつだって幸せだけでできているわけではない。
そのことを、僕は中学校生活の中で知った。