翌朝。家から出ると曇り空が広がっていた。雨の気配を感じながら、愛車に乗って定食屋に向かって行った。店に入ると、祥子さんがカウンターの席に座っていて、ビニール袋を差し出して言った。
「今日は客は来ないよ。だから、これ持って行きな」
「はい。でも、最近余り働いてないし、気になります」そう返してみると、祥子さんが「いいんだよ。給料はきっちり出るから、心配しないの。ほら、行っといで。今日は来なくていいよ」と言って、明るく笑った。
「分かりました。お疲れ様でした……」
後ろ髪を引かれつつ、店から抜け出し、愛車に乗り込んで、工場に走って行った。
工場に着いてみると、少しシャッターが降りていて、中を覗いたら、同じ景色が広がっていた。
つい今日はどこにしようかと考えたところで、車の下から身体が滑ってきた。そして、背中を起こしたと思ったら、すぐに立ち上がって、黒瀬さんがこちらを見て言った。
「おはよ。つーか、お前……、お菓子美味かった。ありがとな」
「いえ、どういたしまして……」と返してみたものの、少し不機嫌なように感じた。
黒瀬さんは気怠そうに軍手を外し、ポケットから煙草を取り出して、口の端でくわえながら言った。
「大福が寂しがってたぞ、遊んでいけよ」
「……いや、少しだけで……」と口ごもりながら、様子を窺いつつ、テーブルの上にビニール袋を置き、椅子を横目で見ると、大福が背筋を伸ばして座っていた。
すると、黒瀬さんのほうから煙草の匂いがしてきて、声を掛けられた。
「で?楽しかったか?」
尋ねられたことで、田舎の情報網の速さに、気まずくなった。
「それなりに……」と返して、静かに椅子のほうへ行き、大福の隣に腰を下ろした。
「へぇ……」と黒瀬さんは言い、煙草の煙を横に吐き出すと、こちらを向き、「誘われただろ」と尋ねてきた。
「別に」そう返してみると、黒瀬さんは、「あ、そう。つーか、俺の真似?」と、また尋ねてきた。
「いいえ」と答えると、すかさず黒瀬さんが、「別にいいけど」と言って、煙草を何度も吸っていた。
思わず「黒瀬さんだって……」と言いかけたら、黒瀬さんは軽く息を吐き、煙草を手にして言った。
「お前、あんまり出歩くなよ……」
「なんでですか……」少し不機嫌に尋ねたとき、遠くで雷が転がるような音が鳴っていた。
そこで、黒瀬さんの顔が曇ったように見えた。その瞬間、どこかに雷が落ちたような轟音が響いた。
瞬く間に雨が降り出して、辺りは夜に変わったみたいに、暗くなっていた。
ふと、いつもの姿に視線を向けると、黒瀬さんがおもむろに口を開いた。
「俺は、お前が不安になったら、心配になんだよ……」
その言葉は雨に紛れても耳に届いて、胸の奥が軽く跳ねた気がした。
「今日は客は来ないよ。だから、これ持って行きな」
「はい。でも、最近余り働いてないし、気になります」そう返してみると、祥子さんが「いいんだよ。給料はきっちり出るから、心配しないの。ほら、行っといで。今日は来なくていいよ」と言って、明るく笑った。
「分かりました。お疲れ様でした……」
後ろ髪を引かれつつ、店から抜け出し、愛車に乗り込んで、工場に走って行った。
工場に着いてみると、少しシャッターが降りていて、中を覗いたら、同じ景色が広がっていた。
つい今日はどこにしようかと考えたところで、車の下から身体が滑ってきた。そして、背中を起こしたと思ったら、すぐに立ち上がって、黒瀬さんがこちらを見て言った。
「おはよ。つーか、お前……、お菓子美味かった。ありがとな」
「いえ、どういたしまして……」と返してみたものの、少し不機嫌なように感じた。
黒瀬さんは気怠そうに軍手を外し、ポケットから煙草を取り出して、口の端でくわえながら言った。
「大福が寂しがってたぞ、遊んでいけよ」
「……いや、少しだけで……」と口ごもりながら、様子を窺いつつ、テーブルの上にビニール袋を置き、椅子を横目で見ると、大福が背筋を伸ばして座っていた。
すると、黒瀬さんのほうから煙草の匂いがしてきて、声を掛けられた。
「で?楽しかったか?」
尋ねられたことで、田舎の情報網の速さに、気まずくなった。
「それなりに……」と返して、静かに椅子のほうへ行き、大福の隣に腰を下ろした。
「へぇ……」と黒瀬さんは言い、煙草の煙を横に吐き出すと、こちらを向き、「誘われただろ」と尋ねてきた。
「別に」そう返してみると、黒瀬さんは、「あ、そう。つーか、俺の真似?」と、また尋ねてきた。
「いいえ」と答えると、すかさず黒瀬さんが、「別にいいけど」と言って、煙草を何度も吸っていた。
思わず「黒瀬さんだって……」と言いかけたら、黒瀬さんは軽く息を吐き、煙草を手にして言った。
「お前、あんまり出歩くなよ……」
「なんでですか……」少し不機嫌に尋ねたとき、遠くで雷が転がるような音が鳴っていた。
そこで、黒瀬さんの顔が曇ったように見えた。その瞬間、どこかに雷が落ちたような轟音が響いた。
瞬く間に雨が降り出して、辺りは夜に変わったみたいに、暗くなっていた。
ふと、いつもの姿に視線を向けると、黒瀬さんがおもむろに口を開いた。
「俺は、お前が不安になったら、心配になんだよ……」
その言葉は雨に紛れても耳に届いて、胸の奥が軽く跳ねた気がした。



