人外男子のキケンな溺愛!?



「…大丈夫?」


――手を差しだした少女の目は、二色に光っていた。





「いってくるね、お母さん、お父さん!」


私は甘雨(あまう) 志乃(しの)。これから転校生としてやっていく、中等部2年生!


「…やっぱり心配。大丈夫?志乃…。」

「私なら大丈夫!お母さんってば心配しすぎだよ…!」

「そう…。あんなことがあったから、やっぱり…。」


心配しすぎだって、と言いながら、私の気持ちも少しだけ曇っていた。

お母さんの言った、「あんなこと」。


――いじめのことだ。

私は前の学校で、いじめに合っていた。

原因は、私の二色の目――

――オッドアイ。


「やっぱり、カラーコンタクトで隠さなくてもいいのか?」

「うん!メガネだけで大丈夫だよ!お金かかったらお父さんたちに負担がかかっちゃうし…!」


時計を確認して、ドアノブに手をかけた。


「じゃあ、いってきます!」

「「いってらっしゃい…!」」





「…。」

家が見えなくなったところで、ため息をついた。


(やっぱり…ちょっと怖いな…。)


前と同じことになってしまったら。

またいじめられたら。


「っ…暗く考えちゃダメだ…!」


――頭の中の重い思考を振り払うように頭を振る。


新しい学園で。

普通の生活を手に入れるんだ…!





(着いた!大きいっ…!)


これから過ごす学園――「神篠共学園(かみしのきょうがくえん)」。

前の学校も大きいほうだと思っていたけど、比べ物にならないくらいに大きかった。

この学園は少し特殊で、人間と「人外」と呼ばれる存在がともに通っている。

人外の人にはまだ会ったことがないけれど、神様や獣人、妖怪とかがいるらしい。


私がこの学園を選んだわけ。

それは、ここならオッドアイでも変な目で見られないと思ったから。

――確信はないけれど。


(まずは…ちゃんと職員室に着かなくちゃだ…!)





「う…嘘でしょ…!?」


あれから10分後。

――私はいまだに職員室に着けずにいた。

本当にありえないぐらい大きい敷地に、見ただけで10はある校舎。

そしてなによりも、方向音痴の私!


(地図もないし…これって迷子、だよね…!?)


――キーンコーンカーンコーン。

絶望的なタイミングで、チャイムがタイムリミットを知らせる。

どうしようか、と思考を回していた時。


「君が転校生?」

「ひゃっ!?」


いきなり声をかけられた。


(驚いて変な声出しちゃった…!)


声の主は、白い翼が生え、頭の上にふたつの輪が浮かんだ男子だった。


「いきなりごめん。僕は神天(しんてん) 紀皇(きおう)。君が転校生で合ってる?」

「あ…合ってます…。甘雨(あまう) 志乃(しの)です…。」

「じゃあ、ついてきて。もう遅刻だよ」


そう言うなり、翼を広げて飛び上がってしまった!


「え、えぇっ!?」


呆然とする私。

はっとして、姿が小さくなっていく神天さんに、慌てて叫んだ。


「あの!!私っ…人間なので…!ついていけないです…!!」


聞こえたのか少し不安だったけど、神天さんは振り返って戻ってきてくれた。


「…へぇ。君、人間なんだ?珍しいね。」

「…え、珍しい?ここって人間も通える学園、でしたよね…?」


神天さんはついてきて、と言うように歩きだす。


「そうだけど、基本的に人外ばっかりだよ。好んで人外に近づく人は少ないからね?」

「…。…そうなんですね…。」

(もしかしたら聞いちゃダメなことだったのかなっ…。気を悪くさせちゃったかも…!)


もう少し違いに配慮しないと、と心の中で反省する。


「…。」


反省に必死だった私は、神天さんが何か言いたげにこっちを見ていることに全く気が付かなかった。





「ここが職員室だよ。じゃあ僕は戻るね」

「本当にありがとうございました…!助かりました!」


ふっと笑った神天さんは、そのまま窓から飛んで行った。


(すごいなぁ…空を飛ぶの、ちょっとあこがれるかも…!)




「…面白い子。」


上空で神天さんがそんなことをつぶやいていたのなんて、聞こえるはずなかった。