Jour de neige

 よくわからぬまま、その場で別れたものの、私は帰りの電車ですぐにそれを読み始めた。

 内容は、オールラウンダー作家の彼とはいえ、滅多に書かないラブストーリーのようだ。
 その内容とは⋯⋯。


 覆面作家である主人公の青年は、職場で自分を慕ってくるバイトの少女のことを、ずっと気にかけていた。
 少女は、なりふり構わずアタックしてくるが、青年は、その都度やんわり断るしかなかった。
 出逢った頃の青年は、職場の誰にも気付かれぬよう、ひっそりと作家デビューしたばかり。
 少女と親しくなった頃には、新作も次々発表していたが、その人気がいつまで続くかなどわからない。
 それに、彼は脚が少し不自由で、片脚を引きずってしか歩けないことも引け目に感じていた。
 少女は、そんなことは全く気にしない、困った時には私が助ける!とまで言うが、彼女よりずっと年上の青年にしてみれば、やはりどうしても気にしてしまう。
 年上であることも、脚を引きずっていることも、職業が不安定なことも。
 青年は、少女のことを誰よりも深く想っているからこそ、彼女を受け入れるわけにもいかず、ずっと独りの人生を選ぼうと決めた。