スパイ×ミッション! 〜護衛対象は御曹司〜



やっぱり高校生っていったら文化祭とか部活だよね!



団結してお店をやったり劇をしたり、部活では大会に出たりとかっ。


告白とか彼氏とか出来たり!





そんなワクワクした生活を夢見てたのに…………。







「はあぁぁぁぁぁ」



思いっ切り溜め息をついた私に、隣にいた光牙が眉をひそめた。



「どうしたんだよ、いきなり」




目の前に大きくそびえ立つ校舎。明らかに厳しいであろう警備に、どどーんと真ん中に置かれた噴水。


私たちはこれからこの学校………神宮寺学園に転入するんだけど。




頬を膨らませながら光牙を見た。



「だってさ、こんな学校に通ってる護衛対象なんて、ヤバイやつに決まってるんじゃん。
せっかく高校では遊べるって思ったのに」



こんな学校に通ってる時点でまずお金持ちでしょ。ていうことは御曹司か御嬢様じゃんっ。



「遊ぶって………。目的が違うだろ。俺らは護衛しに来てんだから」



髪をかき上げながらそう言う光牙。カッコいいんだからムカつくなぁ………。





「そうだけどさぁ………」




「ほら、文句言ってないで行くぞ」



歩き出した光牙の後に続きながら、長い校舎までの通路を歩く。




「伊織さんは香道部室にいるってさ」



「伊織さん、じゃなくて先輩でしょ。香道部って、そんなのあるの?」



首を傾げた私を見て、ふいっと視線を逸らした光牙。




「知らね。あの伊織さんのことだから自分で作ったんだろ」




それは………ありえる。



伊織さん、こと伊織先輩は一つ上の高2の先輩だ。


また、私たちの所属するスパイ組織、MADE NIGHTの先輩でもある。




ほんわかして優しそうに見えるんだけど…………全然そんなことはない。


笑顔で毒を吐くどころか、指導者としてリトルスパイ(見習いスパイみたいなものだよ)を無人島に拉致させたり………。いや、もう思い出さないようにしよう。




とにかく行動力も何かもが無限大な伊織先輩ならやりかねない。




足を進めると校舎内に大きな部屋が見えてきた。近づくと「香道部」のプレートが掛けられている。




「ここだな」



重そうな扉を押し、中へ入ると想像通り伊織先輩がいた。




「お、2人とも来たね」



にこっと笑いながら、伊織先輩は私たちを見つめた。


はあ………昔の記憶が蘇る………。


 

「まぁ座って座って。早速説明するから」



にこにこしながら言う先輩につられ、椅子に座る。




「伊織先輩も転入してきたんですか?」


気になっていたことをズバッと聞くと、笑顔で頷かれた。



「もちろん。上からそういう指示を受けたんだよ。先輩として後輩を見てやってくれって」




「……………」


光牙の頬が微妙にひきつっている。うん、気持ちは分かるよ光牙。



「取りあえず説明するね」




テーブルの上にいくつかの資料を滑らせた先輩。


「まず、今回の護衛対象は月影 光牙。二人と同じ高1。旧財閥の御曹司で、かなりの美形男子ってとこかな」



月影 光牙かぁ………。名前からしてカッコいいな。


印刷された写真に目を向けた。



「うわぁ………」


思わず感嘆の声が漏れて慌てて口を塞ぐ。



サラサラのセンターパートの黒髪に漆黒の瞳。鼻筋はスッとしていて顎も引き締まっている。

クールな表情はどこか涼しげで、余裕があるように見えた。



いかにも御曹司って感じだよ。




――――ペシッ。



「うわっ」


頭を軽く叩かれたと思ったら、不機嫌な表情の光牙が。




「お前、どうせイケメンだなぁとか思ってたんだろ。恋愛ごっこなんてしてる暇ないぞ」



ぎくり。



「別に思ってないよ!恋愛とかは考えてないし………。護衛対象だし」



むっとして光牙を見ると、ふいと視線を逸らされた。



「…………ならいいけど」




ふぅ、ほんと痛いとこ突かれるなぁ。



私は中1の時からMADE NIGHTのスパイになったから、学校生活もあまり送れていない。



だからこそ、高校では思いっ切り青春するって決めてるんだ!



まぁそれは光牙も同じだけどね。






「―――――二人とも」




伊織先輩の声に我に返って、シャキッと姿勢を正す。



「分かってると思うけど、護衛をするってことはそれなりに狙われてるってことだよ。今まで通り、気を緩めないように」



真面目な表情で言う伊織先輩を見て、ふと冷静になった。



そうだった、今までの護衛とかボディガードの時も何度も光牙と一緒に闘ったもんなぁ……。




それにしても、私たちと同い年なのに旧財閥の御曹司で跡取りなんて、大変だろうなぁ。私には絶対出来ないよ。


そんなことを考えながら、私は大きく頷いた。