バツイチだけど恋をしてもいいですか

「前に『非合理的だ』と言ったことは謝る」

 思いがけない言葉に、目を瞬かせる。

 課長が私に向かって謝った……?

「純粋に、不思議だったんだ。俺は親に弁当を作ってもらった記憶がないから」
「えっ? でも、子どもの頃の遠足とか……」
「遠足の時は現金を渡された。『学校に行く途中で買いなさい』と」
「そんなこと、あります?」
「うちは両親ともに弁護士で、多忙な上に合理主義者なんだ。弁当を手作りする非効率性とデメリットを説明され、俺も確かにその通りだと納得したし、なんの疑問も抱かなかった」

 きっぱりと言い切る課長を見て、思わず小さく噴き出してしまう。

「課長は子どもの頃から、そういう性格だったんですね」
「その結果、部下から恐れられるようになった」

 淡々とした口調で言われ、「そ、そんなこと……っ」と慌てて口を開いた。

「いや、いい。自分でも、冷血漢の仕事人間だという自覚はある」

 神崎課長は表情を変えないまま、ブラックコーヒーをひと口飲んだ。

 そして、視線をこちらに向ける。

「――で、事情を話してもらえるか」

 本題を切り出され、緊張で背筋が伸びた。