バツイチだけど恋をしてもいいですか

 花音のお迎えの時間が頭をよぎったけれど、こんな状況でわがままを言える立場じゃない。あとで保育園に、延長保育を利用しますと連絡しなきゃ……。

「いや、終業後は忙しいだろう。昼のほうが都合がいいんじゃないか」

 予想外の言葉に、目を瞬かせる。

「そ、そうしてもらえると、すごくありがたいですが」
「では、昼休みに面談という名目で、会議室を押さえておく」
「え、わざわざ……?」
「ほかの社員に聞かれたくない話だろう」

 淡々とそう言われ、私は目を丸くした。

 今まで、神崎課長がルールを守らない社員に対して、容赦なく叱責する姿を何度も見てきた。だから、私のことも人目があろうがなかろうが、厳しい態度で責めるに違いないと覚悟していたのに……。

 こんなふうに気を使ってもらえるなんて、考えてもいなかった。

 エレベーターの扉が開き、課長は「では、昼に」と言い残して先に出ていく。

 その背中を見送りながら、私はしばらくその場に立ち尽くした。





 昼休み。私は小さな会議室で、神崎課長と向かい合っていた。緊張のあまり背筋が伸び、手のひらがじっとりと汗ばむ。