バツイチだけど恋をしてもいいですか

 嫌な予感に背筋を強張らせながら見上げる。そこにあったのは、神崎課長の整った横顔だった。

 いつの間にそこに……っ!

 一瞬にして心臓が凍り付く。

 課長は階数表示を見上げたまま、「おはよう」と淡々とした口調で言った。

「お、おはようございます……」

 心の準備もできていないのに、朝一で遭遇してしまうなんて。

 緊張と気まずさで黙り込んでいると、課長は視線を動かすこともなく、私だけに聞こえる声の大きさで話しかけてきた。

「昨日の件について詳しく聞きたい。時間を作ってもらえるか」

 あぁ、やっぱりそうなるよね……。

 会社には、家族構成を報告する義務がある。娘のことを隠していたと上司に知られた以上、注意されるのは当然だ。それどころか、会社に虚偽の報告をしていたことに対して、なんらかのペナルティが科せられるかもしれない。

 逃げられないと悟り、「わかりました」とうなずく。

「業務に関することではないので、話をするのは仕事が終わってからのほうがいいですよね」