バツイチだけど恋をしてもいいですか

 一度姿を見かけた時点で、もっと気を付けるべきだった。

 後悔していると、課長は私と花音を見ながら口を開く。

「――それで、この子は君の娘か?」

 その問いかけに、一気に緊張感が高まった。

 なんとかして誤魔化さないと。私は額に汗を浮かべながら、必死に言い訳を考える。

 そうだ。今日はたまたま娘を預かっているだけで、普段は駿介が育てている。そう説明すれば、納得してもらえるはずだ。

 そう思い、口を開きかけたその時だった。

「ここのところ、お母さんと一緒に毎日のように来てくれるんだよ」

 おじいさんがそう言って花音に笑いかけた。

「なぁ、花音ちゃん」

 その問いかけに、花音は「うん!」と無邪気にうなずく。

「かのんもママも、このスーパーだいすき」
「そうか。うれしいねぇ」

 そんな微笑ましいやりとりを聞きながら、自分の背中に汗が伝うのがわかった。

 課長がゆっくりと視線を私に戻す。

「子どもは沢辺が引き取って、ひとりで育てていると聞いたが?」

 静かにそう問いかける。その声は低く、誤魔化すことを許さない口調だった。

 どうしよう。どうすれば……。