バツイチだけど恋をしてもいいですか

 花音、お願いだから、それ以上しゃべらないで……!

 テーブルの下でしゃがみながら、両手を握りしめる。

 必死に祈ったけれど、もう手遅れだった。

 靴音がこちらに近づき、視界に綺麗に磨かれた革靴が入った。そして、頭上でゆっくりとため息をつく気配。

「――中里だろう?」

 確信を持って名前を呼ばれる。おそるおそる顔を上げると、神崎課長がこちらを見下ろしていた。

 しゃがみ込む私に、課長は冷静な視線を向ける。

 あぁ……、見つかってしまった。

「か、課長お疲れ様です……。こんなところで会うなんて、偶然ですね」

 立ち上がり、動揺を隠すようにそう言うと、課長は静かに口を開いた。

「偶然じゃない」
「えっ?」
「ここは俺の祖父の店だ」

 驚いて店主のおじいさんのほうへ視線を向ける。おじいさんは相変わらず、にこにこと人のいい笑顔を浮かべていた。

 感情の読めない端整な顔立ちの課長と見比べ、「ぜ、全然似てない……」と素直な感想をもらしてしまう。

「悪かったな」
「あ、いえ。悪いとか、そういうことではないんですけど、意外すぎて……っ」