バツイチだけど恋をしてもいいですか

 反論の余地もない課長の言葉に、駿介は黙り込む。ほかの社員も、気まずそうに口を閉ざした。

 その様子を見ていた私は、さすが鬼課長……と心の中でため息をつく。

 こんなふうに規則を守らない者や不正を働く者への容赦ない姿勢が、彼が社員たちから恐れられている理由だ。

「まぁまぁ神崎課長。取引先に迷惑をかけるわけにはいかないし、今回はなんとか……」

 手をこすりながらそう言う部長に、課長は小さく息をつく。

「わかりました。この案件は対応しますが、今後同じようなことが繰り返されないよう、各部署へ提出期限を徹底するよう周知してください」
「も、もちろんだよ、神崎課長」

 部長はこくこくと首を縦に振ってから、駿介に責めるような視線を向けた。

「沢辺くん。これからは気を付けてくれよ」
「……はい。わかりました」

 頭を下げた駿介の顔には、不貞腐れた表情が浮かんでいた。

 部長に背を向けた駿介が、ちらりと私のことを見る。そして、あごをしゃくるように目配せをした。

 話したいことがあるからついて来い。そう言いたいんだろう。