バツイチだけど恋をしてもいいですか

 ラッコは普通茶色だけど、花音は水色とピンク色のラッコを描いていた。男の子と女の子のラッコなんだろう。仲良く手をつないでいて、とてもかわいい。

「おじいさん、ラッコってわかってくれるかなぁ」
「きっとわかるよ。すごく上手だもん」

 そんな話をしていると、入り口の自動ドアが開く音がした。

 お客さんが来たんだな、なんて思いながら花音を見守っていると、店主のおじいさんの声が聞こえてきた。

「おぉ、亘一。今日は早いな」

 誰か知り合いでも来たのかな。

 おじいさんの明るい声に何気なく顔を上げた私は、その場で凍り付いた。

 店内に入ってきたのは、見覚えのあるスーツ姿の長身の男性。

 ――神崎課長だ。

 そう気付いた瞬間、冷や汗が噴き出した。

 慌てた私は、課長から隠れるようにテーブルの下にしゃがみ込む。

 前に一度だけこのスーパーで見かけたけれど、それ以降遭遇することはなかったから、神崎課長はあの時たまたまこの店に立ち寄っただけだと思ってたのに。

「あぁ。今日は仕事を切り上げて――」