バツイチだけど恋をしてもいいですか

 中里からの【以前相談した鬼課長ですが、最近話す機会が増えて少し印象が変わりました】という文章をもう一度読み、小さくうなる。

 この鬼課長が自分のことだと知ってしまうと、どんな返事を書けばいいのか余計にわからなくなる。

 その日、俺は返答を書くのに、いつもの何倍も時間をかけてしまった。






 翌朝。出社した俺がエレベーターへ向かって歩いていると、背後から声をかけられた。

「お、亘一」

 振り向くと、大吾がコーヒーを片手にこちらに歩いてくる。

「おはよう」
「おはよう、相変わらず難しい顔してんな」

 指をさして笑われ、「普通の顔だ」と否定する。

「お前の『普通』は、世間一般の『不機嫌そう』なんだよ」

 こんな軽口、いつもは聞き流していたけれど、中里から〝鬼課長〟と呼ばれていたことを思い出す。

「……気を付ける」

 俺がそう言うと、大吾は驚いたように足を止めた。

「え、なに。今日雪でも降る?」
「九月に雪が降るわけないだろ」
「いや、例えだろ。マジレスすんな」

 大吾は肩を揺らして笑ってから、俺と並んで歩きだす。