バツイチだけど恋をしてもいいですか

「取引先情報もないし、締結日も空欄。こんなんで審査に回せるわけないでしょ」

 その言葉に、隣にいた女性社員もうんざりした表情を浮かべる。

「毎回差し戻しになるから、二度手間ですよね。何度注意しても忙しいからって、まともに聞いてくれないし」

 契約書の審査は必要な情報と書類を完璧に揃えた状態でしか受け付けられない。けれど営業部からの申請書類は不備が多く、そのたび法務部側の業務が停滞してしまうのだ。

 今までの私なら、彼女たちの愚痴になんの反応もせず聞き流していただろう。

 だけど――。

「あの……、余計なお世話だったらすみません」

 声をかけると、渡辺さんがこちらを見た。

「今の依頼書の形式って、法務の知識がまったくない営業部の社員には、少し複雑だと思うんです。確認事項をわかりやすくしてチェックシートにまとめれば、不備が減るんじゃないかと……」

 私の言葉を聞いて、彼女たちが顔を見合わせる。

 緊張しながら反応を待っていると、渡辺さんは「そうなんだ」とつぶやいた。

「法務部で働いていると、こんなのわかって当然だと思っていたけど、慣れてないと複雑なのね」