渡辺さんはため息をつくと、私に背を向けた。そして、ほかの女性社員と顔を寄せ合う。
「中里さんって娘を元夫に押し付けてひとり暮らしをしてるのに、出社はいつもギリギリって。だらしないわよね」
「そもそも母親なのに、子どもを引き取らないなんて無責任すぎますよ。営業部の同期に聞いたんですけど、中里さんは家事も育児もしないから、旦那さんに愛想をつかされたらしいですよ」
「同じ女として信じられないわ~」
私の事情なんて、なにも知らないくせに……。
ひそひそと交わされる会話に、怒りと不満が込み上げる。
ぎゅっと手を握りしめた時、「お疲れ様でーす」と明るい声が聞こえてきた。
フロアに入ってきたのは、三カ月前に離婚した元夫の沢辺駿介だった。
私は法務部でアシスタント業務をし、駿介は営業部で働いている。部署が違うのに朝から顔を合わせるなんて、今日は厄日かもしれない。
一瞬目が合ったけれど、駿介は私を無視して部長のデスクに近づいていく。
「部長。ちょっとお願いがあって。これ、急ぎで見てほしいんですけど~」
彼が持ってきたのは、取引会社との契約書のようだ。
「中里さんって娘を元夫に押し付けてひとり暮らしをしてるのに、出社はいつもギリギリって。だらしないわよね」
「そもそも母親なのに、子どもを引き取らないなんて無責任すぎますよ。営業部の同期に聞いたんですけど、中里さんは家事も育児もしないから、旦那さんに愛想をつかされたらしいですよ」
「同じ女として信じられないわ~」
私の事情なんて、なにも知らないくせに……。
ひそひそと交わされる会話に、怒りと不満が込み上げる。
ぎゅっと手を握りしめた時、「お疲れ様でーす」と明るい声が聞こえてきた。
フロアに入ってきたのは、三カ月前に離婚した元夫の沢辺駿介だった。
私は法務部でアシスタント業務をし、駿介は営業部で働いている。部署が違うのに朝から顔を合わせるなんて、今日は厄日かもしれない。
一瞬目が合ったけれど、駿介は私を無視して部長のデスクに近づいていく。
「部長。ちょっとお願いがあって。これ、急ぎで見てほしいんですけど~」
彼が持ってきたのは、取引会社との契約書のようだ。



