バツイチだけど恋をしてもいいですか

「こんなところで管巻いているより、さっさと帰って皿のひとつでも洗ったほうがいい。なんなら、奥さんの好きな果物でも……」
「買う買う! どれがいい?」

 祖父は自然に話題を変え、男を促し青果売り場のほうへと歩いていく。

 その様子を黙って見ていると、祖父がちらりとこちらを見た。

 ――気にするな。

 目線だけでそう言われた気がした。

 ゆっくりと息を吐き出し、視線を手もとに向ける。

 作業を再開しようとしたけれど、男から言われた言葉が頭から離れなかった。




 俺の両親はふたりとも弁護士だった。

 忙しく働く両親の姿を見ているうちに、自然と自分も弁護士になりたいと思うようになっていた。

 大学の法学部をトップで卒業し、大学院もストレートで修了。司法試験は一発で合格。二十五歳で弁護士登録をし、大手法律事務所に就職した。

 周囲から将来有望だともてはやされ、自分でも正しさで人を救う弁護士になるのだと信じて疑わなかった。

 けれど、それが崩れたのは三十二歳の時。

『あなたのせいで、彼は死んだのよ――…!』