バツイチだけど恋をしてもいいですか

「なぁ、どうして亘一くんは難しい資格を取って弁護士先生になったのに、辞めてしまったんだい?」

 その問いかけに、視線を上げる。

「普通の会社で働くなんて宝の持ち腐れじゃないか。俺が亘一くんだったら、バリバリ稼いでたくさんの人を救って、みんなに感謝される弁護士になるけどね」

 無遠慮に踏み込んでくる言葉に、喉のあたりがぐっと詰まる。

 俺だって、できるならそうしたかった。そうできると信じていた。だけど――……。

 口を開きかけた時、パン!と手を打つ音が聞こえた。

「はいはい。もうその話は終わり」

 のんびりとした声で言ったのは、祖父だった。

 いつからこの会話を聞いていたんだろう。祖父はいつも通りののほほんとした笑みを浮かべながら、俺と常連客の間に立つ。

「奥田さんはお酒が入ると話が長いんだから」
「俺は亘一くんのことを思ってだなぁ」
「それよりも、自分の心配をしたほうがいいんじゃないのかい? 奥さんが主婦友達と熟年離婚について話していたけど?」
「じゅ、熟年離婚!?」

 祖父の言葉に、赤かった男の顔が一気に青ざめる。