バツイチだけど恋をしてもいいですか

 表情から言いたいことを読み取った祖父が、俺が断わる前に「人生経験だと思ってやりなさい」と強引に手渡す。

「この仕事は俺には向かない」
「だからこそだよ」

 祖父は俺の返事も待たず、さっさとレジに戻ってしまった。

「相変わらず、人の話を聞かない……」

 仕方なく作業を進めていると、自動ドアが開き賑やかな声が店内に響いた。

「よぉ、亘一くん! 今日も不機嫌そうな顔をしてるねぇ」

 入ってきたのは、近所に住む常連の男だ。かなり酔っているようで、顔が赤く足取りもふらついている。

「不機嫌なわけではないですが」

 至極真面目に答えると、男は笑いながら俺の肩を叩いた。

「せっかく男前なのに、そんな怖い顔をしていたらお客さんが逃げていくぞ」

 今まで何度も同じようなことを言われてきた。俺は普通にしているつもりでも、他人には怒っているように見えるらしい。

 だが、周囲から怯えられたところで特に問題はないし、無理に笑って愛嬌を振りまく必要性も感じない。

 聞き流していたけれど、酒が入っているからか彼の話は止まらなかった。