バツイチだけど恋をしてもいいですか

「たとえば、この店に来てくれる常連さんたちだ。お客さんの笑顔には、お金には代えられない価値がある」

 祖父の言葉に「非合理的だ」とつぶやく。

「合理的じゃないからこそ、意味があるものもあるんだよ」

 この話になると、祖父はなにを言っても決して引かない。議論するだけ無駄だと諦め、息を吐き出した。

「そういえば」

 ふと思い出し、俺と入れ違いに店を出ていった客についてたずねてみる。

「さっき、店を出ていった女性客がいたと思うんだが……」
「あぁ。さっきのお客さんかい? 最近、小さな女の子と一緒に、毎日のように買い物に来てくれるんだよ。とても仲のいい母娘で、いつも笑顔で挨拶をしてくれるんだ。こうやって常連さんが増えていくのはうれしいねぇ」

 機嫌よく笑う祖父を見ながら、「……俺の勘違いか」とつぶやく。

 小さな女の子を連れているなら、中里ではない。

 元夫の沢辺が娘を引き取り、中里はひとりで暮らしをしているはずだ。

 それに、彼女は家事も育児もせずに愛想をつかされ離婚されたらしいし……。

 社内で聞いた噂を思い出しながら、昼休憩に見かけた中里の弁当が頭に浮かぶ。