バツイチだけど恋をしてもいいですか

 ほっと胸をなでおろし「じゃあ、今日はいちごにしようね」と靴下を履かそうとすると、首を横に振られた。

「じぶんではく」

 そう言って、小さな手で靴下を掴む。

 あぁ。一秒でも早く家を出たいのに……っ。

 でもここで反論すれば、せっかく直った機嫌をそこねかねない。

 焦る気持ちを隠しつつ、靴下を履く我が子を見守る。

「はけたよ!」
「すごい! さすが年中さんだね!」

 胸を張る花音を褒めながら、バッグを掴んだ。

 花音の手を引いてアパートを飛び出し、急ぎ足で保育園へ。出迎えてくれた先生に「よろしくお願いします」と頭を下げて踵を返した。

 ひとり小走りで駅に向かい、満員電車に飛び乗る。


 そして会社に到着したのは、始業時間の三分前だった。

 ……よかった。なんとか間に合った。

 自分の席にバッグを置き心の中でつぶやいた瞬間、冷たい視線を感じた。顔を上げると、先輩女性社員の渡辺さんと目が合った。

「中里さん、今日もギリギリね」

 渡辺さんの言葉に、慌てて頭を下げる。

「すみません」
「火曜日も遅刻寸前じゃなかった?」
「……気をつけます」