バツイチだけど恋をしてもいいですか

 心の中で祈っていると、課長はなにかに気付いたように足を止め、方向を変えた。そして、店の奥へと進んでいった。

 今のうちだ!と思いながら、花音の手を引いて出口へ向かう。

 無事に外に出られた瞬間、「はぁ……」と大きな息がもれた。緊張から解放され、その場にへたり込みそうになる。

 まさか、こんなところで課長に遭遇するとは思わなかった……。

 冷や汗を拭っていると、花音が不思議そうに私を見上げる。

「さっきのひと、ママのかいしゃのこわいひと?」
「え、なんでっ?」
「ママ、あのひとみて、おにっていってた」

 驚きのあまりもらしてしまったひとり言を、しっかり聞かれていたようだ。

「ええと……」

 なんと説明すべきか悩んでいると、花音は楽しそうに口を開いた。

「おにがいたから、かくれたんでしょ? かのんもきょう、ほいくえんでおにごっこしたよ!」

 保育園での出来事を話し始めた花音に、「そっか。楽しかった?」とたずねる。

「かのん、ずっとおにでこまってたら、れんくんがいっしょにおにになってくれた」
「へぇ。蓮くん優しいね」