バツイチだけど恋をしてもいいですか

 こぢんまりとして古びたスーパーとは不釣り合いな、凛とした雰囲気のスーツ姿の男性。

 どこかで見覚えがあるような……なんて思った次の瞬間、私は一気に青ざめる。

 スーパーに入ってきたのは、神崎課長だった。

 動揺のあまり「なんで鬼課長がこんなところに……っ」とつぶやく。

 超合理的で仕事人間の課長が、こんな庶民的なスーパーに来るなんて予想外すぎる。

 買い物に行くなんて時間の無駄だ。必要なものはすべてネットで頼めばいい。なんて言いそうなのに……!

 そんなことを考えながら、慌てて身を屈め商品棚の後ろに隠れる。

「ママ、どうしたの?」

 あきらかに様子のおかしい私を見て、花音が不思議そうに首をかしげた。

「な、なんでもないよ」

 小声でそう言い誤魔化しつつも、焦りで冷や汗が噴き出す。

 課長に花音と一緒にいるところを見られるわけにはいかないのに……っ。

 課長は店内の商品を眺めながら、こちらに近づいてくる。コツコツという革靴の音が、だんだん大きくなっていく。

 やばい、やばい、やばい。このままじゃ見つかってしまう。

 どうかこっちにこないで……っ!