その噂のせいか、中里は法務部でも浮いた存在だった。歓送迎会などの集まりにも来ないし、ランチはいつもデスクでひとりで取っている。仕事以外で誰かと会話をしているところすら見たことがない。
しかし、仕事ぶりは真面目で丁寧。営業と法務では求められる知識がまったく違うけれど、新たな仕事をこなすために必死に努力しているのが伝わってきた。
会社での様子だけしか知らないが、無責任に育児を放棄する人間だとはとても思えない。
「それにしても、亘一が他人を気にかけるなんてめずらしいね」
「別に深い意味があるわけじゃない。職場の空気が悪いなら、上司として改善策を考えねばと思っただけだ」
大吾の指摘にそう返しながらも、残業を注意した時の彼女の傷ついた表情が頭から離れなかった。
俺は正しいことを言っただけだ。それなのにこんなにも気になるのは、彼女と同じ表情で無理をし続け、限界を迎えた人物を知っているから。
五年前。弁護士として正しい道を進んでいると思い込んでいた俺は、無自覚に依頼人を追い詰め、自分の無能さを思い知った。あの時のことを思い出すと、今でも胸が苦しくなる。
しかし、仕事ぶりは真面目で丁寧。営業と法務では求められる知識がまったく違うけれど、新たな仕事をこなすために必死に努力しているのが伝わってきた。
会社での様子だけしか知らないが、無責任に育児を放棄する人間だとはとても思えない。
「それにしても、亘一が他人を気にかけるなんてめずらしいね」
「別に深い意味があるわけじゃない。職場の空気が悪いなら、上司として改善策を考えねばと思っただけだ」
大吾の指摘にそう返しながらも、残業を注意した時の彼女の傷ついた表情が頭から離れなかった。
俺は正しいことを言っただけだ。それなのにこんなにも気になるのは、彼女と同じ表情で無理をし続け、限界を迎えた人物を知っているから。
五年前。弁護士として正しい道を進んでいると思い込んでいた俺は、無自覚に依頼人を追い詰め、自分の無能さを思い知った。あの時のことを思い出すと、今でも胸が苦しくなる。



