バツイチだけど恋をしてもいいですか

 あきれた顔でこちらを見るのは、営業部で働く中村大吾だった。俺と大吾は同い年で同じ大学に通っていた、長年の友人でもある。

「そっちこそ」

 俺が言い返すと、大吾は「俺はもう帰るところ」と笑う。

「せっかくの金曜なんだから、亘一もさっさと帰れよ」

 彼の言葉に、「帰ったところで、誰もいない」と真顔で答えた。

「出た。ハイスペックな独身貴族」
「ハイスペックって、俺がか?」
「お前しかいないだろ。法学部を首席で卒業して、司法試験も一発合格」
「だが挫折して、弁護士の道を諦めた」
「あれは挫折って言うか……」
「挫折だ」

 淡々と事実を口にする俺に、大吾は黙って肩を上げた。

「俺なんかより、お前のほうがずっとすごい」

 ぽつりと言うと、大吾は首をかしげる。

「俺のどこが?」
「新卒で入った会社で頑張り続けて、結婚もして、子どももいる」

 そしてなにより大吾は周囲から好かれる男だ。

 人づきあいが苦手で学生の頃から孤立しがちだった俺に、唯一話しかけてきたのが彼だった。