バツイチだけど恋をしてもいいですか

「中里。俺も君が好きだ」

 ささやくようにそう言われ、愛おしさが込み上げる。

 私が涙をこらえていると、突然課長がはっとしたように体を硬くした。そして慌てた様子で腕をほどく。

「す、すまない!」

 突然謝罪された私は、「え?」と目を瞬かせた。

「君の許可も取らずに、勝手に抱きしめてしまった」

 顔を真っ赤にしてうろたえる神崎課長。いつも冷静な彼からは、想像もつかない慌てぶりに、愛おしさがさらに募る。

「だ、大丈夫です……。その、すごくうれしかったので」

 頬を熱くしながら言うと、課長も耳まで真っ赤にして、照れくさそうに口もとを覆った。

「そうか。それなら、よかった」

 普段の頼もしい姿とのギャップに、心臓がきゅんと音を立てる。

 お互いに顔を見合わせては赤くなり、恥ずかしくて前が向けなくなる。

 三十七歳と三十二歳。それぞれ人生経験を積み大人になったはずなのに、本気で人を好きになると、こんなに不器用になってしまうなんて。

 気まずさとときめきに視線を合わせられずにいると、花音が私たちの間にやってきた。

「かのんも、だっこー!」