バツイチだけど恋をしてもいいですか

 心配そうな視線に気付き、はっとする。

「ごめんね。ちょっとぼうっとしてた」

 笑顔でそう言い、バッグを傘の代わりに花音の頭の上に掲げる。

「雨だから、急いで帰ろうか」
「うん」

 足元の水たまりに気を付けながらアパートに向かっていると、視界の端に柔らかな明かりが見えた。

「あれ?」

 思わず足が止まる。住宅街の細い通りの奥に、小さなスーパーがあった。

 大手のチェーン店ではなく、個人経営のお店なんだろう。入り口の上の看板にはどこか懐かしい書体で『セイイチマート』と書かれていた。

「こんなところにお店があるなんて知らなかった……」

 そうつぶやいてから、「ちょっとだけ雨宿りしようか」と花音に声をかける。

 雨から逃げるように入り口をくぐり、蛍光灯で照らされた明るい店内に息を吐き出した。

「いらっしゃい」

 そう声をかけてくれたのは、ねずみ色のエプロンをつけた白髪のおじいさん。


 このスーパーの店主だろうか。優しい微笑みで迎えられ、張り詰めていた気持ちが緩む。

「急に降りだしたね。雨宿りかい?」
「あ、すみません。ちゃんとお買い物もするので……」