16言えなかった真実 神崎side
沢辺と西野の処分が決定したのは、それから二週間後のことだった。
沢辺は懲戒解雇。西野は支社への異動が命じられたが、依願退職というかたちで会社を去った。
そして沢辺と西野の件が社内に知れ渡ると同時に、娘をひとりで育てる中里への周囲の対応が変わった。
今まで吹聴されてきた悪意のある噂が完全に否定されたことはもちろん、中里の誠実さや真面目さが、周囲に正しく評価されるようになった結果だ。
もう彼女は、理不尽な状況でひとりで苦しむことはない。
「中里さん。そろそろお迎えの時間でしょ? 先に上がっていいわよ」
そう声をかけられた中里が「ありがとうございます」と笑顔を作る。
「じゃあ、キリのいいところで帰らせてもらいますね」
そんなやりとりを眺めていると、中里がこちらを見た。
終業間近の騒がしいフロアで、彼女と視線が合う。その瞬間、周囲の音が遠ざかる。
中里は一瞬目を瞬かせ、それから慌てたように視線を落とした。うつむいた頬や耳がわずかに赤く染まっているのを見て、胸の奥がくすぐったくなる。
「中里さん、どうしたの?」



