バツイチだけど恋をしてもいいですか

 絞り出すようにそう言うと、花音が「やだ!」と大きな声を出した。

「かんざきさんと、またおでかけするって、やくそくしたもんっ!」
「花音……」
「やだぁ! かんざきさんに、あいたいっ!」

 ぽろぽろと大粒の涙をこぼしてぐずる花音を、私はただ抱きしめることしかできなかった。途方に暮れ、自分の不甲斐なさに消えてしまいたくなる。

「ごめん。ごめんね、花音……」

 花音は癇癪を起こしたように泣き続けたあと、疲れて私の膝の上で眠ってしまった。

 起こさないように布団に運び、赤く腫れた目もとを見下ろす。

「あの雨の日に、お店に入らなければよかったのかな……」

 薄暗い寝室で、花音の髪をなでながらつぶやいた。

 おじいさんに出会うこともなく、掲示板の言葉に救われることもなく、神崎課長の優しさを知ることもなければ、花音にこんな悲しい思いをさせずにすんだのに。

 一度知ってしまった幸せを失うさみしさに、こらえていた涙があふれ出し、頬を伝って畳に落ちる。

 今までの出来事をひとつひとつ思い出す。

 そのどれもが愛おしくて大切な時間だった。