15取り戻した居場所 愛美side
ぼんやりと考えごとをしながら、部屋の中を片付けていた。
段ボールの中に、小さくなった花音の服や、古いおもちゃを詰めていく。職場が変わるなら、引っ越しをする可能性もある。そうなった時のために、なるべく身軽にしておきたい。
『会社を辞めなければ、神崎課長と不倫していたという噂を社内に流す』
そう駿介から脅された私に、選べる選択肢はひとつしかなかった。たとえ根拠のない噂でも、社内に広がれば簡単には消えないし、どれだけ苦しむことになるかを知っているから。
私が会社を辞めれば迷惑をかけずにすむ。そう思って書いた退職願は、神崎課長に預かっておくと言われてしまった。
会社を辞めるという気持ちは固まっているはずなのに、迷いや不安がわき上がる。
シングルマザーの私を雇ってくれる会社があるだろうか。無事に就職できたとしても、生活費や家賃、保育園の料金、花音が成長すればもっともっとお金が必要になる。
将来のことを考えると、不安で押しつぶされそうになる。
「ママ」



