バツイチだけど恋をしてもいいですか

 その言葉に、「あ、はい」とうなずいたけれど、頭に浮かんだのは神崎課長の顔だった。

 私の事情を理解し、気持ちに寄り添い、そして信じてくれた。誰よりも優しくて、頼もしい人。

 彼の存在が自分の中でこんなにも大きくなっていることを自覚して、鼓動が速くなる。

 どうしよう。私、神崎課長のことを……。

 課長のことを考えるだけで、胸がきゅっと締め付けられた。





 午後になり書類を他部署に届けるために社内を歩いていると、突然腕を掴まれた。

「ちょっと来い」
「きゃ……!?」

 強引に引きずり込まれたのは、非常階段へ続くひと気のない通路。動揺しながら見上げると、私の腕を掴んでいたのは不機嫌な顔をした駿介だった。

「駿介……っ。いきなりなんなの?」
「お前、最近調子に乗ってるよな」

 駿介は威圧的な態度で私を見下ろしながら言う。

「調子に乗ってる……?」
「男ができたからか?」
「なんのこと?」

 私が眉を寄せると、駿介が苛立ったように舌打ちをした。

「とぼけるのかよ。お前、自宅に男を連れ込んでるだろ。母親なのに、最低だな」