バツイチだけど恋をしてもいいですか

「中里」と名前を呼ばれる。

 振り返ると、そこには少し息を切らした神崎課長が立っていた。

 会いたくなかったのに……。

 気まずさにうつむくと、課長は息を吐き出しながら言う。

「よかった。君に会いたかったんだ」

 その言葉には、私への拒絶も批判も含まれていなかった。ただ純粋に、私に会うために、ここへ来てくれたことが伝わってきた。

 中村さんから、今朝の話を聞いたはずなのに……。

「私を避けないんですか……?」

 思わずそうたずねると、「避けるわけがないだろ」と即答された。

「でも、西野さんとのやりとりを聞いたんですよね」
「あぁ。エントランスでのトラブルのことは中村から聞いた」
「じゃあ……」

 彼は私を咎めるために、わざわざ会いにきたんだろうか。

 駿介から『後輩をいびるなんて最低だな』と吐き捨てられたことを思い出し、胸が苦しくなる。

 きつい言葉を覚悟して、ぎゅっと手のひらを握りしめると、課長が静かに口を開いた。

「君が西野を怒鳴ったんじゃなく、西野が人前で被害者を演じて、君の評判を落とそうとしたんだろう?」