バツイチだけど恋をしてもいいですか

 私の迷いを見透かすようなひと言に、ぎくりと背中が冷たくなる。

「そ、そういうわけじゃ」

 慌てて首を横に振った私に、課長は「非合理的にもほどがあるな」と冷ややかな視線を向けた。

「無理をして仕事をされるのは、周囲にとって迷惑でしかない」

 そんな冷たい言い方をしなくたって……!

 容赦ない言葉に頬がカッと熱くなる。

 けれど、喉まで出かかった反論をなんとか飲み込み黙り込んだ。

 女手ひとつで娘を育てる私には、転職する余裕なんてない。不満や苦痛は我慢して、この職場で頑張るしかないんだ。

 そう思いながら、イスから立ち上がり神崎課長に向き直る。

「……申し訳ありませんでした」

 深く頭を下げた時、足から力が抜けるような感覚に襲われた。

 このところ寝不足気味だったせいで、めまいを起こしてしまったようだ。血の気が引き、目の前が暗くなる。

 ぐらりと体が傾いた、その瞬間だった。

 腕を掴まれ、倒れかけた体が止まる。

「大丈夫か」

 低い声が耳もとで響いた。

 おそるおそる目を開くと、視界に入ったのはたくましい腕と整った顔。