バツイチだけど恋をしてもいいですか

 集中して仕事をしていると、「中里」と名前を呼ばれた。ほかの社員はもう帰ったと思っていたのに、まだ残っている人がいたんだ……。

 そう思いながら振り返ると、そこにいたのは神崎課長。

「な……っ」

 なんで鬼課長が……っ。

 そうもらしそうになり、慌てて言葉を飲み込んだ。

「なにをしているんだ」
「あの、急ぎの仕事が終わらなくて」
「その仕事は来週の水曜までに終わらせればいいはずだが?」
「え……」

 驚いて課長を見上げる。だったら私はなんのために、ひとり残って仕事をしていたんだろう。

 私の表情を見て、課長がわずかに眉をひそめた。

「誰に急ぎだと言われたんだ」
「それは……」

 渡辺さんだと答えれば、彼女が課長から責められるかもしれない。

 ただでさえ雰囲気がいいとは言えないこの職場に、さらに波風を立てたくない。

 そう思い、迷った末に言葉を濁す。

「……すみません。私が勘違いしたんだと思います」

 私の答えを聞いて、神崎課長は大きく息を吐き出した。

「自分のせいにして、この場をやり過ごせば満足か?」